軽貨物車に乗るユーザーの多くが見た目の改善や走行安定性向上のためにタイヤのインチアップを検討します。特に軽バンや軽トラックでは、標準装着されている12インチや13インチから14インチへと変更するケースが増えています。しかしながら、この14インチ化は慎重に判断しなければ、車検時に不合格となる重大なリスクが潜んでいます。その主な理由が、ロードインデックスの不足です。
ロードインデックスとは、タイヤ1本が支えることができる最大荷重を示す数値です。14インチタイヤに多い155/65R14などのサイズは、乗用車用として設計されたものが多く、耐荷重性能が商用車向けに比べて低めです。例えば、純正装着の145R12 6PR(ロードインデックス80/78)に対し、155/65R14の多くは73〜75程度しかないものも見受けられます。
以下の表で代表的なサイズと耐荷重の違いを比較してみましょう。
タイヤサイズ
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主な用途
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ロードインデックス
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最大耐荷重(1本あたり)
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車検適合可能性
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145R12 6PR
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商用軽貨物
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80/78
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約450kg(LI80)
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高い
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155/65R14(LI73)
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乗用車向け
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73
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約365kg
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低い
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155/65R14(LI75)
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一部商用対応
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75
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約387kg
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やや高い
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車検では、車両の軸重をもとに1本あたりに求められる最小耐荷重を計算し、それを下回っていないかを確認します。たとえば、車両の後軸重が800kgなら、後輪2本で400kgずつ支える必要があり、それに対応するロードインデックスは少なくともLI76以上が必要になります。よって、LI73やLI74のタイヤを装着していると、書類審査は通っても実際の検査で落とされるリスクがあるのです。
ホイールの変更を伴うインチアップでは、扁平率の変化によってタイヤのサイドウォール強度が変わるため、乗り心地や走行安定性に影響が出るだけでなく、荷重性能が見落とされやすくなります。特にアルミホイールとの組み合わせは、軽量化を狙う一方で、空気圧管理を怠るとタイヤにかかる負担が増し、リスクが倍増します。
結論として、14インチ化を行う際には、サイズが合えば良いという判断では不十分であり、ロードインデックスの確認と車両の実際の軸重をもとに慎重に選定を行う必要があります。安全かつ確実に車検を通すためにも、カスタムショップや整備士に相談し、装着タイヤが軽貨物登録車両に適合しているかを明確にしておくことが求められます。
軽バンや軽トラに装着されている純正タイヤは、その車両の構造や使用用途に基づいて最適なロードインデックスを持つよう設計されています。例えば、スズキのエブリイやダイハツのハイゼットに標準装着されている145R12 6PRタイヤは、ロードインデックスが80/78と高く、積載を前提とした耐荷重設計になっています。
一方、カスタム性を求めて代替タイヤに変更する場合、よく候補に挙がるのが155/65R14や165/55R14などの乗用車向けタイヤです。これらは扁平率が低く、見た目が引き締まるため人気ですが、ロードインデックスが低く設定されていることが多く、特に車検の観点から注意が必要です。
具体的に、純正と代替タイヤのロードインデックスと耐荷重性能を比較したものが以下の表です。
タイヤ種類
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サイズ
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ロードインデックス
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最大負荷能力(kg)
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特徴
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純正タイヤ
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145R12 6PR
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80/78
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450/425
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商用設計、高耐荷重、車検適合性高
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代替タイヤ(例1)
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155/65R14
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75
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387
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見た目良好、耐荷重不足で注意
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代替タイヤ(例2)
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165/55R14
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72
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355
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車検NGの可能性、後軸には不向き
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タイヤの耐荷重性能は、単にサイズではなく、構造と設計思想にもよる部分が大きく、たとえインチ数が同じでも、耐荷重能力には大きな差があります。特に後輪駆動の軽トラや荷物を多く積む軽バンでは、後軸の負荷が大きいため、前後で異なる負荷能力を持つタイヤを装着する際には、後輪側に高いLIのものを選ぶ必要があります。
JATMA(日本自動車タイヤ協会)の資料でも、商用車に求められる耐荷重性能は乗用車より高く設定されており、6PR以上の設定が一般的です。これを4PRや乗用グレードのタイヤに置き換えた場合、運行時の安定性が損なわれるだけでなく、過積載によってバーストのリスクが飛躍的に高まります。
そのため、タイヤ交換の際には「見た目」「価格」だけでなく、車検の適合性・荷重性能・空気圧設定などを総合的に判断し、万全の状態で運行できる選択が必要です。特に業務利用している方は、安全性が業務効率や対外信頼性にも直結することを意識すべきです。
結論として、軽バンにおけるLI75〜80の範囲は、使用環境によってはギリギリである場合もあります。積載量が多い、運行距離が長い、空気圧管理が不十分といったリスク要因があるユーザーは、あらかじめ高めのLIを確保することで、車検対応だけでなく、安全な運行を実現することが可能になります。タイヤ選びは見た目や価格だけではなく、運用実態に合った選定が最も重要です。